くうねるだす

Exploring My Nature

GWの台湾で南湖大山・中央尖山を単独テント泊縦走してきた

GWというのは、僕みたいな中途半端なハイカーにとってはちょっと微妙なシーズンだ。アルプスなどの3000m峰や、北海道・東北の山々はまだ雪に閉ざされていて、雪の消えた低山も新緑や花の季節にはまだ早い。

 

せっかくの大型連休だし、それならばと海外に目を転ずると、あるじゃないか。お手軽で短期の旅にぴったりな登山大国・台湾が。そんなわけで2017年のGW、僕はひとり、テントを背負って台湾へと飛んだ。トレイルトリップの始まりだ。

GWに台湾・南湖大山-中央尖山を旅する

南湖大山の山頂部

台湾には百以上もの3000m峰があって、日本百名山ならぬ台湾百岳、五岳(特に優れた五座)や三尖(秀麗な尖峰三座)など、かなり細かいランクづけがされている。今回ターゲットにしたのは五岳のひとつ・南湖大山(3742m)。観光地っぽい雰囲気の台湾最高峰・玉山(3952m)を避け、マイナーそうな台湾第8位の高嶺をチョイス。さらに、北一段という縦走路を辿って三尖のひとつ・中央尖山(3705m)を目指すことにした。

北一段の登山地図

大まかなスケジュールは以下の通り。

04/29 移動日。東京→台北→宜蘭

04/30 登山開始。宜蘭→登山口→雲稜山荘泊

05/01 南湖大山北峰→南湖小屋泊

05/02 南湖大山主峰→南峰→中央尖渓山屋泊

05/03 中央尖山ピストン→南湖渓山屋泊

05/04 下山日。登山口→宜蘭→台北

05/05 帰国

 

海外登山も初めてなら、5日に及ぶテント泊縦走も初めて(それまで最長2泊3日)という、ワクワクづくしのプラン。

 

憧れの台湾へ。台北で準備し宜蘭へ移動

成田から約4時間で台湾に降り立つ。台湾はずっと来たいと思っていた場所だ。近くて、美女が多くて、ごはんが美味しい。つまり最高。

そんなワクワクをもって台北に降り立ったはいいものの、今回の旅のメインターゲットは登山だ。山に入るための準備もしなければいけないし、スケジュール的にはのんびり観光している時間はほとんどなかった。

 

台湾の山小屋は日本でいう避難小屋のようなもので、管理人もいなければ食料や酒を買うこともできない。つまり、食材はすべて自分で担ぐことになる。ちなみに山小屋を利用するためには事前に申請が必要で、僕は4泊すべてをテント泊で申請していた。

慌ただしくガスカートリッジ(飛行機に持ち込めないから現地調達)と5日分の食料をゲットして、南湖大山登山口へのバスが出る宜蘭への特急に飛び乗る。台北-宜蘭は電車がたくさん出ていて、1時間半ほどで到着する。

 

21時に宜蘭に到着。

どんな田舎町だろうと思っていたけれど、駅前には24時間営業のスーパーやマクドナルドまであって、思ったよりもずっと過ごしやすそうな地方都市だった。食材は台北より明らかに安いし、こっちで仕入れれば良かったと後悔する。

宜蘭のゲストハウス

△泊まったゲストハウスはめちゃくちゃオシャレでいい雰囲気だった(ついでに受付のお姉さんが可愛かった)けれど、相部屋のメンバーのうち8人が女子で、シャワーがクソ長い。結局2時間くらいシャワー待ちをして、横になれたのはとっくに日付は変わってからだった。

 

初の海外登山を開始!長い林道を抜けて雲稜山荘へ

南湖大山の登山口へとアクセスする梨山行きのバス

翌朝7時半の梨山行きのバスで登山口へ向かう。バス停が思っていたより遠くてガチダッシュ。台湾は他の東南アジアと違ってかなり正確に公共交通機関が動くから、遅れたらその時点でおいてけぼりだ。

 

▽バスは途中、小さいコンビニやお店の前で休憩した。ここで乾燥野菜と肉まんをゲット。

台湾で購入した肉まん

中国語が分からないので、とりあえず「南湖大山(Nanhu mountain)」と言っていたら、10時頃、ここだ!と言われてバスを降ろされる。どうやら登山口に着いたらしい。

南湖大山の登山口

登山口といっても、実はこれは約7キロに及ぶ林道の入り口であり、本物の登山口はその奥にある。香港から来た5人組に誘われて一緒に林道を歩く。美味しいバームクーヘンをもらったり香港の山事情を聞いたりと楽しく歩いたが、遅すぎて日が暮れそうなので林道終点の登山口から先はソロで先行することにした。

太魯閣国立公園の入り口の看板

太魯閣国立公園の入園許可証

 △登山口で入山届を提出

林道はほぼ平坦だったけど、登山口からは一気に登って稜線に出る。この急登がなかなかしんどくて、汗だくになりながら登る。先週まで雪山にいた身体が、夏の暑さについていけない。

 

▽台湾の森林限界は、日本よりずっと高い。標高2500mの稜線でも、屋久島にあるような苔むした巨木がゴロゴロしている。

コケむした大木

雲稜山荘

雲稜山荘についたのは17時前。今日は山小屋もテン場も満杯のようだった。人の多さにびっくりしながらテントを張っていると、頼んでもいないのにその辺のおばちゃんが手伝ってくれる。そのあとも「ごはん食べた?」「明日は晴れそうだよ」「あそこの水場は枯れてる」などと気遣ってくれて、人の優しさが染みる夜だった。

 

台湾登山2日目。ついに南湖大山へ。

朝の3時頃から台湾のオッチャンやオバチャンは元気に起き出して、4時前には出発してしまった。僕はテントで爆睡していて、7時に行動開始というゆるゆるなスタートを切る。今日は標高差1000mを一気に駆け上がって南湖小屋まで行くだけ。コースタイムで約7時間だ。

とはいっても、台湾のコースタイムはかなりゆるくて、普通に歩いてコースタイムの半分から6割ほど。日本の山と高原よりもさらにちょっとゆるいイメージだから、昼には南湖小屋に着くだろう。

南湖大山と中央尖山

稜線に沿って歩き、3200mを超えてやっと森林限界に出る。霞のかかった春らしい空に、南湖大山のピーク(左)と中央尖山の綺麗なピラミッド(右)が見える。

草原のど真ん中を抜けてピークへと続く1本のトレイル。こういうトレイルが歩きたくて、僕はここまで来たんだ。

南湖大山の登山道

南湖北山の頂上の看板

予定通りコースタイムの半分ほどで進み、ちょっと寄り道して南湖北山(3536m)のピークも踏んでいく。寄り道といっても標高は3500m越え、日本だったら第2位の高嶺が、ここ台湾にはゴロゴロしている。

南湖大山の北峰(南湖大山は北峰・東峰・主峰・南峰・東北峰・東南峰など多くのピークをもつ莫大な山だ)までいくつか小さな岩稜のピークを抜けていく。この辺はちょっと危なっかしいルート。

南湖北山から南湖大山へと向かう登山道

南湖小屋

南湖北峰に無事にたどり着き、カールに下るとそこに南湖小屋がある。小屋の脇の水場は湧き水だからそのまま飲んでも問題ないと聞いた。天気もいいから、テントを張って空身で南湖大山の東峰まで散歩する。

 

莫大なカール地形を歩く贅沢に浸りながら歩いていると、1時間ほどで南湖東峰に着いてしまう。

南湖大山のカール

南湖大山東峰の山頂

南湖東峰は板状の岩を45度に傾けて、そのまま置いたようなピークだった。

風は強く、あっという間に体温を奪っていく。実は5月の台湾をナメていた僕は薄いフリース(パタゴニアR1)しか持っていなかったのだけど、約3300mの南湖小屋付近は夜には0度付近まで下がることもあるという。天気も悪くなってきて、不安を抱えながら引き返す。

 

南湖小屋まで戻ると、暖かそうなダウンを着込んだオッチャンが、小屋の西のちょっと小高くなった場所までいけば電波が入ると教えてくれた。台湾SIMを準備しておいて良かった。生存連絡をして早々にシュラフに潜り込む。今夜は星空は拝めそうにない。

ランタンのついたテント

 

台湾登山3日目。南湖大山を抜け、北一段縦走路へ

霧に包まれた登山道

目を覚ますと、一帯はガスに包まれていた。今日は南湖大山の主峰と南峰を抜けて北一段縦走路に入り、中央尖山の懐の渓まで下る。つまり南湖大山からの景色を拝める最後のチャンスになるわけだけど、天候は一向に回復の兆しを見せず、レインウェアを着ての出発となった。

南湖大山主峰の山頂

楽しみにしていた南湖大山主峰(3742m)・南峰(3449m)からの眺めはゼロ。そこから先は人もいなくなり、小屋に着くまで誰にも会わない孤独なトレイルとなった。訪れるハイカーのほとんどが南湖大山までのピストンで、北一段を縦走するハイカーはあまりいないようだった。

 

それでもトレースは明瞭で、片側が切れ落ちたリッジや、神秘的な森の中を抜けていく。ガスに満たされ、自分以外に誰もいないトレイルを踏みしめる。僕が大好きな瞬間。

南湖大山南峰から中央尖山へと向かう登山道

懸念していた雨が降ることはなく、標高を下げるにつれて晴れ間が広がっていく。昼過ぎには渓流のほとりの中央尖渓山屋に着いてしまった。小屋はオンボロな上に真っ暗で、テントを持ってきて良かったと心から思う。

中央尖渓山屋

中央尖渓の流れ

透明感に満ちた渓流にダイブして3日ぶりに体を洗い、服を干す。ストレッチをして、流木に腰掛けて本を読む。明日はコースタイム16時間・単純標高差3600mという、間違いなく今回の山旅で最も過酷な1日になるはずだ。

 

暗くなる直前、日本人の沢ヤのグループが中央尖山から下りてきて、一緒に焚き火を囲んだ。中央尖山までは沢を詰めていくトレイルで何度も渡渉が必要なこと、往復で11時間ほどかかったことなど教えてもらう。僕は沢の装備も技術もない。嫌でも明日への緊張感が高まるなか、何度も行程をイメージしながら眠りに落ちた。

中央尖渓のほとりでの焚き火

 

台湾登山4日目。中央尖山の頂へ

谷まで明るさが満ちる6時を待って、中央尖山へと歩き出す。目は冴えわたり、体は軽い。次々と現れる渡渉点を、岩から岩へと飛んでかわしていく。

今日、中央尖山へ向かうハイカーは、文字通り僕一人だけだ。もし途中で怪我をして動けなくなっても、最低24時間は誰もこのトレイルを通ることはない。緊張感とアドレナリンが混ざり合い、かつてないほど集中しながらトレイルを辿る。

中央尖山へと向かう途中の滝

朝の渓谷の美しさに息をのみながら沢を詰めていくと、どうしても越えられない小さな滝にぶち当たった。足場がツルツルで正面から登り切ることもできず、高巻きもできない。対岸の岩壁をへつっていくしかなかった。もしボルダリングの基本を身につけていなければ、引き返すしかなかったかもしれない。

 

帰りに無事に通過できるか不安になりながらも高度をあげていくと、やがて水はなくなり、穂高岳を思わせる岩壁の間を抜けてコルに出た。

南湖大山と中央尖山の間の谷

中央尖山のコル

ふと目を上げると、驚いたことに、トレイルは草原の中に続いていた。こんなに荒々しい岩の切り立った稜線の、しかも標高3300mを超えた場所に草原が広がっているという事実が不思議でならなかった。日本にこんな場所はないんじゃないかな。

 

中央尖山の山頂部

そのまま中央尖山のピークまで駆け上がる。台湾五岳を全て眺められる大展望はガスに阻まれていたけれど、ひとりでここまで来れたという事実が素直に嬉しかった。

 

お昼ちょうどに中央尖渓山屋にたどり着き、テントを畳んで南湖渓山屋へと出発する。中央尖山を目指すときに遡上した中央尖渓を、飛び石を渡りながら下っていくが、やがて飛び石では渡れなくなってサンダルに履き替えた。

テバのアウトドアサンダル

中央尖渓の透き通った流れ

  

しばらくするとトレイルは樹林帯へと続き、18時頃、目的地の南湖渓山屋に到着。僕以外に人はおらず、夜は小さな焚き火をしてしっぽりと南湖大山での最後の夜を楽しむ。

 

台湾登山5日目。下山からのヒッチハイク

宜蘭へと戻るバスは1日2本。もともとは14時のバスのつもりだったけれど、頑張れば9時半の方に乗れそうだと気づき、早足で下ることにした。

 

南湖渓を渡り、稜線まで登り返してどんどん下っていく。人には会わなかった。

途中、飛んで来た虫が左耳に突き刺さるという大事件があったけれど(どうしても取り出せず、その間にも虫はどんどん奥に入っていき、結局水を耳に流し込んで切り抜けた)、なんとかバス到着の5分前に下山完了。

南湖大山登山口とバックパック

着替えようと上裸になったとき、道の向こうからバスがやってくるのが見えて、必死で乗りますアピール。運転手と目が合う。よし、と思ったのもつかの間。なんと、バスはそのまま通り過ぎていってしまった。

 

絶対に僕の存在に気づいていたのに...上裸だったのが悪かったのか?

理由は謎のままだけれど、次のバスは5時間後。さすがに待ってはいられない。こうなったら、得意のヒッチハイクだ!と親指を立てると、5分でジムニーのオッチャンが乗せてくれた。英語は通じないし中国語も分からなかったけれど、宜蘭まで乗せてくれることに。結局途中でごはんまで頂いてしまった。優しすぎる。

 

しばらくして宜蘭に到着。オッチャンにお礼を言って、宜蘭名物・鴨賞(スモークした鴨肉みたいなの)とコーラを片手に帰路についた。

 

まとめ

結局、今回の山旅では、雨こそほとんど降らなかったものの、終始ガスに阻まれて息をのむような景色には出会うことができなかった。

それでも、単独での海外登山を無事に終えられたこと、テント泊で4泊5日という縦走をクリアできたことは僕にとって非常に意味のある経験となった。

 

そして、帰りに宜蘭まで送ってくれたオッチャンをはじめ、台湾の人々には本当に暖かく接して頂いた。直接的ではないにせよ、僕の経験をこうやって記事に残すことで、次に台湾登山をする人の一助となれたらとても嬉しく思う。