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登山服の着こなし術・レイヤリングを世界一分かりやすく解説しよう

以前、「登山初心者におすすめの服装と定番ウェアを一挙に紹介する」という記事を書いた。手っ取り早く登山に必要な服装が知りたい方はぜひ読んでみてほしい。
 
この記事では、さらに1歩踏み込んで「レイヤリング」というウェアの着こなしについて説明していこう。
 
この記事を読めばそれぞれの登山ウェアの役割が分かるようになるし、凍傷や低体温症といった登山のリスクを下げることにもつながる。
 

万能の登山ウェアは存在しない

これは登山に限らず全ての道具選びに当てはまるけれど、「どんな時にも快適に使える万能ウェア」なんて存在しない。「ベストなウェア」というのはシーズンや登山スタイルによって違ってくるし、日帰り登山の1日の中でも、朝の登りはじめと夕方の下山時に着るべき服は変わる。
 
1枚で全てのコンディションに対応するのは無理だということを頭の片隅に置いて読み進めてほしい。
 

レイヤリングは「戦略的な重ね着」

そこで、山での色んなコンディションに対応するために「重ね着」が必要になってくる。
 
しかも、ただ適当に重ねるのではなくて、「雨を防ぐ」「温める」といった「機能」に特化したウェアを戦略的に重ねることで、ベストな衣類環境を実現する。
 
例えば秋のハイキングならこんな感じ。
・早朝の歩き始め
→速乾性に優れたシャツ+保温性の高いフリース
・風の強い稜線
→風を防ぐレインウェアをプラス
 
このように、「機能に特化したウェアを、コンディションに合わせて組み合わせ、重ねる」という考え方が「レイヤリング」の正体だ。
 
だから、登山の始めから終わりまで全く同じ服装で過ごすことはほとんどなくて、何度も立ち止まって、着たり脱いだりを繰り返しながら進んでいくことになる。
 

登山用ウェアの目的

なんでそこまでしてウェアの着こなしや快適性にこだわるのか、疑問に思う人もいるだろう。
 
ひとことで言えば、「低体温症にならないため」だ。低体温症の怖さは、体温の低下で正常に思考することができなくなり、死に至ること。
 
そんな低体温症の原因となる「濡れ」と「風」(濡れた状態で風に吹かれるというは低体温症になる鉄板パターン)を防ぐことが登山ウェアとレイヤリングの最大の目的だ。
 

基本のレイヤリングは3つ

登山ウェアは、肌に近い順にベースレイヤー・ミドルレイヤー・アウターレイヤーの3つに分類できる。これは「絶対に3枚重ねなければいけない」という話ではなくて、ただ3つの分類があるよ、という話。
 
それぞれの大雑把なイメージは以下。
・ベースレイヤー:汗を吸収する
・ミドルレイヤー:体温を保つ
・アウターレイヤー:雨風をシャットアウト
 
実際にはベースレイヤーのうえにアウターレイヤーを重ねたり、ミドルレイヤーを2枚重ねたりと、状況によって組み合わせを変えていく。
 
ここからは、具体的なウェアを挙げながら、それぞれの特性を解説していこう。
 

登山の基本となるベースレイヤー

ベースレイヤーは登山の最も基本的なウェアで、肌着にあたるもの。登山用のウェアの中で唯一、登山中ずっと着続けるウェアになる。
 
ベースレイヤーの役割は、「肌をドライに保つこと」。先ほど「濡れ」を避けろと書いたけれど、「汗による濡れ」を防ぐのがベースレイヤーの役割といういうことになる。
 
機能としては、汗を素早く吸収して外側へと放出し(吸湿性)、濡れても早く乾く(速乾性)。他に、何日も着ても臭くならなかったり(防臭)虫を寄せつけなかったり(防虫)、紫外線をカットしたり、といった+αの機能をもったものもある。
 

ドライレイヤー

ベースレイヤーのさらに下に着るウェア。水分を含まない(もしくは弾く)素材が使われていて、汗を吸収し外へ放出することに特化している。
気温が低く汗をかきやすいコンディション(秋の晴れた日など)で重宝する。
 
 

メリノウール

保温性と防臭効果がある天然素材。ただし、ポリエステルに比べて乾くのに時間がかかるため、気温が低い時期(夏以外の3シーズン)に使いやすい。
 
 

ポリエステル100%シャツ

吸湿性と速乾性に優れた人工素材。
個人的には発汗の多い夏山ではポリ100のシャツがベスト。
 
 

ハイブリッド(ウールとポリエステルの混紡)

ウールとポリエステルのいいとこ取りをしたウェア。冬用ベースレイヤーとして使っているパタゴニアのメリノエアが最高すぎて溺愛中。
 

体温調節のためのミドルレイヤー

ミドルレイヤーは防寒着にあたるもので、役割は「体温を保つこと」。快適なコンディションで登り続けるのに活躍する。また、色んなウェアを含むジャンルでもある。
 
保温性のほかに、快適に着続けられる着心地のよさ(ストレッチ性)や、ベースレイヤーと同じく吸湿性と速乾性といった機能がある。雨を弾く(撥水性)ものもある。
 

フリース

吸湿性と通気性・ストレッチ性に優れていて、使い勝手が非常に良く、普段着としても使いやすい。雨への耐性がないので、天候が悪化したらアウターとの併用が必要。
 
 

ダウン

重量に対する保温力が最も高い天然素材。収納したときにも超コンパクトになるが、濡れると使い物にならない。山小屋やテントでの防寒着としてはベスト。
 
 

化繊インサレーション

フリースとダウンのいいとこ取りのようなウェア。濡れや風に強く、着心地も通気性も良い。使い勝手の良さではフリースに劣るけれど、濡れが予想されるコンディション(例えば冬山)では心強い。
 
 

ソフトシェル

アウターとミドルの中間。ソフトシェルにも色々あるが、一般的には風を通さず(防風性)、保温性とストレッチ性があって雨を弾く(撥水性)。
 
雨以外(ちょっとの雨)ならアウターとして使え、悪天候下ではアウターを重ねることで風雨を完全にシャットアウトできる。
 
また、通年使えるので、登山ウェアの中で最も使いやすいアイテム。
 
 
ハードシェルとの違いは「ハードシェルとソフトシェルの違いを世界一分かりやすく解説しよう」で説明している。
 

雨風を防ぐアウターレイヤー

アウターレイヤーの役割は、外のコンディションをシャットアウトすること。
 
機能としては、水や雪を通さない防水性と、風を通さない防風性に加えて、ウェア内部の水蒸気(汗)を外に逃す透湿性が求められる。
 

レインウェア

登山の必需品で、「三種の神器」のひとつ(他の2つは登山靴とバックパック)。雨の日だけでなく、風を凌いだり外気をシャットアウトしたりするのにも使える。
 
 

冬用ハードシェル

レインウェアの冬バージョンで、冬山の厳しい風・冷気・雪をシャットアウトするための最強のウェア。
 
本格的な雪山以外では必要ない。
 
 

下半身のレイヤリング

ここまで主に上半身のレイヤリングを紹介してきたけれど、下半身のレイヤリングも基本的は同じだ。ただし、下半身のレイヤリングは登山者の好みによるところも大きい。
 
例えば、春〜秋はハーフパンツしか履かない派、逆にロングパンツしか履かない派など、宗派が分かれる(さらにその中でも、ハーフパンツを素足で履く派と、タイツに重ねる派がいたりする)。
 
 

登山中のウェアの着こなし例

実際の登山でどんな風なレイヤリングをしているのか、いくつか例をあげてみよう。
 

ベースレイヤーの着こなし例

ベースレイヤーを着て登山するハイカー

6月の南アルプス。メリノウール半袖(上)にコンプレッションタイツ+ハーフパンツ(下)。

バックパックの上には、稜線に出たらすぐに着られるようにソフトシェルをくくりつけている。登り始めは寒いので、ベースレイヤーのうえにソフトシェルを重ねることが多い。

 

ミドルレイヤーの着こなし例

ソフトシェルを着て稜線を歩くハイカー

6月の北アルプス稜線。メリノウールのシャツ+ソフトシェル(上)にコンプレッションタイツ+レインウェア(下)。

 

稜線の風が冷たかったので、ニット帽とレインウェアで防寒。

 

アウターレイヤーの着こなし例 

ハードシェルを着て登山するハイカー

冬の八ヶ岳。ウールとポリ混紡のベースレイヤー+化繊インサレーション+冬用ハードシェル(上)とポリエステルのベースレイヤータイツ+ロングパンツ+冬用ハードシェル(下)。
 
雪だったので濡れを考慮してミドルに化繊をチョイス。
 

まとめ:レイヤリングを駆使して快適な登山を!

細かい内容になってしまっが、重要なポイントは「機能に特化したウェアを組み合わせる」というレイヤリングの考え方だ。
 
自分のウェアにどんな長所と短所があるのか理解したうえで、「濡れと風を避けるためにはどんな組み合わせがベストなのか」を考えながら山に登ってみてほしい。
 
そうすればあなたの登山はもっと快適になるし、リスクの軽減にもつながる。また、次に揃えるべきウェアも必然的にイメージできるようになるだろう。