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ハードシェルとソフトシェルの違いを世界一分かりやすく解説しよう

・ハードシェルとソフトシェルの違いがよく分からない
・あれ?じゃあレインウェアは何なの?
そんなモヤモヤを抱えている登山者は、実は少なくないんじゃないかと思う。
 
バリバリ山に行きまくっているのに「ソフトシェルが何なのかよく分からないから、ハードシェルしか持ってない」という人もいるくらいで、ハードシェルとソフトシェルの違いは登山初心者に限った疑問ではない。
 
この記事では、「ハードシェルとソフトシェルは具体的にどう違うのか」「そもそもなんで違いが分かりづらいのか」を徹底的に深掘りして、整理していこうと思う。
 

ハードシェルとソフトシェルはどう違う?

ハードシェルとソフトシェルの違い。
あれこれと思い悩んだ結果、「悪天候のシャットアウトに特化したアウターがハードシェル、着心地に特化したアウターがソフトシェル」という定義に着地した。
 
とはいえ、これだけでは言葉足らずなので、これから具体的な話をしていこう。
 

防水と撥水の違いを理解しよう

「防水」「撥水」は、ハードシェルとソフトシェルを知る上で切っても切れないキーワード。
 
世の中に存在する素材は「水を通すもの」と「通さないもの」の2つに分けられる。この「水を通さないもの」が防水。一方の撥水は、水を通す素材の表面に加工を施すことで「水を弾く」性質を持たせたもののことだ。水への強さは防水 > 撥水という形になる。
 
素材の性質として「水を通すか通さないか」という決定的な違いがあるため、ちょこちょこ見かける「撥水を究極にまで高めれば防水と同じなのではないか」という質問への答えは「撥水を突き詰めても防水にはならない」ということになる。
 
登山でアウターとして使うウェアには、最低条件として「撥水性」が求められる。つまり、ソフトシェルはある程度の撥水性があることが前提となる。
 

そもそもハードシェルやソフトシェルなんて存在しなかった?

両者について語るために、まず「シェル」とは何かを説明しよう。
そもそも「シェル」といえば「ハードシェル」のことで、「ソフトシェル」というのは最近になって作られた単語だ。
 
登山におけるシェル(shell=殻)とは、山の激しい気象条件から僕ら登山者を守ってくれるウェアで、防風・防水で、風雨や雪をシャットアウトしてくれるアウターのこと。
 
以前は今のような技術がなかったので、防風・防水というハイスペックは着心地とトレードオフ。ゴワゴワで重くて着心地は悪いけど、風や水をシャットアウトしてくれるウェア、それが「シェル」だった。
 
そのうちに、「風雨はだいたい凌げればいいから、軽くて着心地のいいアウター」という新しいジャンルのウェアが登場するようになる。
 
ここで、従来の「ゴワゴワな完全防水のアウター」を「ハードシェル」、新たな「そこそこ風雨を凌げる着心地がいいアウター」を「ソフトシェル」と呼ぶようになった。
 
かつて「ドラゴンボール」だったものが、時間が経つにつれて「ドラゴンボール・改」とか「ドラゴンボール・Z」とか色んなバリエーションが生まれたのと同じ理屈だ。
 

ハードシェルとソフトシェルの違いが分かりづらい理由

歴史的な側面を踏まえると、なぜ今でもハードシェルとソフトシェルの違いがややこしいのか、分かるようになってくる。分かりづらくしている原因は3つ。
 

多様化するソフトシェル

ひとつめは、ひとことに「ソフトシェル」といっても実は多様なウェアが存在こと。
 
「そこそこ風雨が凌げて(撥水性があって)、アウターとして使える」という点さえ満たしていればいいわけで、風をうっすら通すペラペラのウェアから、完全防風のウェア、そして完全防風に保温性を備えた重くて厚ぼったいウェアまで、すべて「ソフトシェル」という一言で片付けられてしまう。
 
「スーパーサイヤ人」といっても、「スーパーサイヤ人2」なのか、それとも4なのか、はたまたフュージョンしているのか...といった具合だ。
 

ハードシェルは時と場合によってニュアンスが違う

ふたつめに、ソフトシェルが色々あるように、ハードシェルにも2種類あって、しかもそれが人や使い方によって意味合いが変わってくることだ。
 
2種類というのは、春〜秋までの3シーズンで使えるウェア(レインウェア)と、冬山登山で使用するためのウェアだ。どちらも防水・防風だけれど、冬用の方がより耐摩耗性が高く、また雪面で転んだ場合に備えて表面がザラザラしている、という細かい違いがある。
 
ちなみに、「冬用の方がスペックが高いならそれを1年中使えばいいじゃないか」と言われそうだけど、冬用のものは生地が厚く、夏に使うには暑すぎて蒸し風呂になるので僕はおすすめしない。逆に、3シーズンのレインウェアは真冬には心もとないが、冬の軽ハイキングになら十分使える。
 
ちょっと話が逸れたけれど、人によってこの両方を含めてハードシェルと呼ぶ人もいれば、冬用の方だけをハードシェル、3シーズンの方はレインウェアと区別する人もいるからややこしい。
 
誤解を避けるためのコツは、「レインウェア」と「冬用ハードシェル」と言い分けること。
 

素材と登山スタイルの多様化によって曖昧になる線引き

そして最後に、技術や考え方の進歩によって「ソフトシェル」と「ハードシェル」という線引きが曖昧になりつつあることだ。
 
ちょっと前までなら、「ゴワゴワで着心地が悪いのがハードシェル」「柔らかくて着心地がいいのがソフトシェル」という図式が成り立っていて、文字どおり「ハード」と「ソフト」という違いで両者をザックリ区別することができた。
 
ところが、技術の進歩や、UL(ウルトラライト)・トレイルランニングという「軽さと速さ」を追求するタイプの登山が現れたことによって、「薄くてしなやかで、ストレッチ性もある」という、一見ソフトシェルのようなハードシェルが出てきている。
 
素材という面でも、かつての「ハードシェル=Gore-tex(ゴアテックス)」という図式は崩れ、アウトドアメーカー各社がこぞって自社開発の素材を使った結果、パッと見ただけでは「防水なのか、撥水なのか、はたまたどちらでもないのか」という区別がつかなくなってきている。
 

ハードシェルとソフトシェルでは「目的」が違う

ハードシェルをきて冬山登山をする男性

ここまで読んだあなたは、「ハードシェルとソフトシェルが生まれた経緯」「両者が区別しづらい状態」についてだいたい分かっていることだろうと思う。
 
そのうえで、冒頭に書いた「悪天候にシャットアウトに特化したアウターがハードシェル、着心地に特化のアウターがソフトシェル」という話に立ち戻ってみよう。これは、「目的の違い」に他ならない。
 
登山には無限のコンディションが存在する。
夏なのか冬なのか、晴れなのか雨なのか、重いバックパックを担いでいるのか、軽装で走っているのか…。こんなのは挙げ始めたらキリがないし、それぞれに合うウェアを作ってなんていられない。
 
そこで生まれたのが「レイヤリング」(「重ね着」をカッコよく言い換えただけのものだけど)。
そういう「無限にあるコンディションそれぞれにベストなウェアを作る」のではなく、「目的に合わせたウェアを作り、その組み合わせを変えることで様々なコンディションにも対応する」という考え方だ。
 
つまり、「肌をドライに保つ」という目的に特化したA、「保温する」という目的に特化したB...という具合にウェアを開発して、登山者がコンディションに合わせてそれらを重ね着したり脱いだりして使うスタイル。
 
そうやってハードシェルとソフトシェルを考えると、雨や風などの「悪天候のシャットアウト」という目的に特化したのがハードシェルであり、「着心地の良さ」という目的に特化したのがソフトシェル、ということになる。もちろんアウターだから、ソフトシェルは「撥水」が最低条件だ。
 
だから、「悪天候のシャットアウト」という分かりやすい目的に比べて、「着心地」という答えのない目的にピンのとまったソフトシェルは、今この瞬間にも多様化し続け、混乱を生み出している。
 

まとめ:ハードシェルとソフトシェルを使い分けて快適な登山を

両者の違いを「防水性と撥水性」とするのが一般的ではあるし、たしかにそれは事実ではある。でも、ソフトシェルだって「防水」にできた方がベターだし、「撥水」というのは結果であって目的ではない。そんな違和感が、この記事を書くきっかけになった。
 
ひとつ言えることは、「ハードシェルもソフトシェルも必要不可欠な最高のウェアだ」ということだ。両者の違いをわかった上で使い分けることができれば、登山はもっと快適になるはずだ。
written by 南蒼樹(@Sight50Sky).
 
 
ちなみに、僕が今狙っているソフトシェルはこちら。新モデルが発売されて値下げされてる今が買い時...