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くうねるだす

信州大学4回生の自然派ブロガー。 おいしいものがすき。おさけも少々。

梅雨の大菩薩嶺~雲取山のテント泊縦走登山で新緑に溺れてきた

アウトドア アウトドア-登山
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梅雨入りした週末に、テントを担いで大菩薩嶺と雲取山を縦走するトレイルトリップに出た。

 
前日の夜にはまだ栃木の那須岳に行こうかと迷っていて、直前になって時間がないとヒーヒー言いながらバックパックに荷物を詰めた。その時には全く予想もしていなかったけれど、その山行は「やっぱり山は最高だ」という喜びと、「もう帰りたい」と泣きたくなる辛さとの、両極端の気持ちを背負って歩くことになる。

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大菩薩嶺~雲取山縦走アクセス&プラン

大菩薩嶺~雲取山縦走コースプラン

Day1. 朝イチで都内を出て電車で山梨へ。上日川峠から大菩薩嶺へ登り、大菩薩峠を北東に抜けて丹波山村方面へ下る。さらに峠をひとつ越え、三条の湯までコースタイム約12時間を踏破してテント泊。

Day2. 三条の湯から雲取山をピークハント、くだりは鴨沢へ降りて奥多摩駅から都内へと帰宅。

総歩行距離約50km、総標高差約5500mのトレイルを1泊2日、テントを担いで歩く。

 

大菩薩嶺の登山口&アクセス

大菩薩嶺の登山口は主に2つ。1つは「大菩薩峠登山口」で、塩山駅でバスに乗り換えて約30分バス停から少しすすんだところに15台分の駐車スペースがある。もう一方が大きめの駐車場を持つ「上日川峠」で、こちらは甲斐大和駅からバスで約45分となる。
 

大菩薩嶺の登山口、上日川峠から山頂へ

朝5時、朝日に埃が輝く東京の空気を抜けて駅に向かう。肩にかかるバックパックの重さがワクワクの大きさのようで心地いい。僕は普段、ウェストベルトを締めない。(断じてお腹が苦しいからではない)だから、バックパックに詰めた荷物の重さは文字通り肩にかかる。
 
山梨へと滑る中央線の中は、目的地「甲斐大和駅」に近づくにつれてハイカーだらけになっていく。側からみたらなんとも不思議な光景だと思う。

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ここから上日川峠行き(片道1000円)のバスに乗り換える。バスは超満員で臨時のバスが出動していた。梅雨だろうがなんだろうが山に行きたくなるハイカーの気持ちが分かってしまう。
 
上日川峠に近づくにつれて晴れ予報の空はどんどん曇っていき、登山口となるロッジ長兵衛に着く頃には完全な曇天となった。

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森に足を踏み入れた瞬間、澄んだ空気が肺を満たす。昨日の雨が綺麗にしてくれたのだろう。足元はしっとり濡れていて、雲の切れ間から時折差し込む光に新緑が輝く。梅雨の山はこんなにも綺麗なのかと驚いた。僕が登山を始めたのは昨年の秋のことだから、梅雨の山も夏山もこれから初めて味わうことになる。
 

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少し歩くと福ちゃん荘があり、ここから登山道は2つに分かれていく。ひとつ目は直接山頂へと向かう直登ルート、もうひとつが大菩薩峠を回って稜線を歩くルートである。
大菩薩嶺は山頂の展望がないから、多くのハイカーは大菩薩峠を越えて景色を楽しむ稜線のルートをとる。対して僕は直登ルートをとって、帰りに稜線ルートを抜けることにした。
 

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息が上がらないように踏みしめる急登の途中で振り返ると、雲と森の強烈なコントラスト。いつの間にか太陽が出ていて、体温が一気に上がる。キツい登りだが距離は短く、福ちゃん荘の分岐から30分で稜線に出た。
 
この林を抜けた先に山頂がある。

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百名山21座目、大菩薩嶺山頂。登山開始から1時間もかけずに登ってしまったが、本日の目的地はここからコースタイムで9時間。景色を楽しみながら稜線を戻り、大菩薩峠へと進む。
 

大菩薩峠を越えて丹波山村へと野生の道を抜けていく。

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介山荘から登山口とは反対方面へと下っていく。あんなに溢れていたハイカーも、メインルートを外れるとほとんど出会わない。
 

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少し下った分岐でルートが分からなくなる。「山道」って雑すぎやしないだろうか。10分近く地図とコンパスをつき合わせて、結局小菅村方面へ進んだ。この「山道」という標識はこの後も何度も見かけることになるが、どうやら登山道ではなく、林道や作業道のことを指しているらしかった。
 

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シカの足跡、クマと思われる爪痕、シカに食べられ樹皮のなくなった木、蝉の抜け殻…東京と山梨の境は既に野生動物の世界だ。
 

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途中にところどころ少し開けているところがあり、地図を確認しながら進む。ここは「ノーメダワ」というポイント。日本語だろうか。
 
川を渡ったところでVの字に伸びる巨木に出会って、思わず唾をのんだ。この存在感は3ヶ月前に屋久島で見たの木々のそれだ。それは、とてつもなく大きなケヤキだった。2股に分かれた幹に苔が茂って、その上にまた別の木が幾つも生えて絡み合っている。色んな木の葉が混じり合う不思議な枝を広げて、それはそこに立っていた。

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貝沢に沿って下ると舗装路に出る。そこが丹波山村で、今から越えるサオラ峠との谷間に押しつぶされるようにこぢんまりとした山村が広がっている。登山口からすでに5時間、累計標高差は2000m、距離にして約20kmを歩いている。目の前のサオラ峠はまるで壁のように聳えていた。
 

サオラ峠で苦しみ、三条の湯でとろける

川を渡り井戸で喉を潤して、本日最後の急登へ。一気に標高差600mを駆け上がる。600mなんて普段なら全く大したことのない登りである。それでも、確実に疲れは身体の動きを鈍らせていた。登り始めて30分、肩で息をしながらバックパックを下ろして休憩する。辛い。海抜0mから富士山へと向かった時に感じたのと同じ感覚だった。もうここでテントを張って寝てしまいたいと、心底そう思った。ポケットのスマホを出して写真の1枚を撮る余裕もない。
 
ノロノロと一歩脚を出し、数十m歩いては休憩した。身体が動かず、両足が攣った。それでも騙し騙し進む。やっとのことでサオラ峠に立った時には1時間半が経っていて、疲労と安堵でグッタリしながら丸太で休んだ。
 
そこから先は緩い下りが続くが、目的地まではコースタイムで2時間。夕方の太陽に照らされる広葉樹林の淡い緑のなかを急ぐ。ちょうど半分の地点に「御岳沢」というポイントがあるはずだったが、沢は4つもあって、結局どれが御岳沢なのか分からなかった。沢を見るたびに「まだ半分か」と思う。疲れ切った脚では、コースタイムはあまり参考にならないだろうが、2つ目の沢が御岳沢だったと信じて歩き続ける。けれども一向に舗装路に出る様子はなく、山道が続く。

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この看板のあった2つ目の沢が御岳沢だったらしい(後でググった)。

 
目的地「三条の湯」は地図表記が旅館となっていたから、近くには舗装路のある普通の宿泊施設だと思い込んでいた。だから不意を突かれた。まず見えたのはオレンジ・緑・黄色のカラフルなテント。最初は状況が掴めず、三条小屋が現れてから僕はやっと理解した。それは、三条小屋のテン場だった。ついに着いたのだ。8時間半の行程を歩いてようやくこの辛さから開放される。

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「ここまで来て温泉に入らないなんて勿体無いですよ。」三条小屋のお姉さんの言った通り、三条の湯はトロトロした優しい温泉で、疲れた身体が溶けていくような気がした。キンキンのビールを持参したチーズとソーセージで味わう。こんなに辛い思いをしたのに、やっぱり山は最高だった。テントの横を流れる沢の音が心地よく、僕はすぐにシュラフに潜り込んだ。
 

三条の湯から雲取山へ、日の出前トレイル

午前3時半、暗闇の中でゴソゴソとテントを畳んで出発する。今日は曇りの予報だから、朝のうちに山頂を踏みたい。ヘッドランプの光を頼りに、疲れの残る身体を引き上げていく。暗いと周りが見えない分、自分の身体の調子が手に取るように分かる。調子は最悪だった。
 
徐々に空には明るさが増し、緩い登りになった登山道をシカの親子を脇目に見ながら進むと、飛竜山からの縦走路と合流する尾根に出た。富士山を見渡す展望の開けたこぢんまりした空間にひとつだけモンベルの黄色いテントが立っている。こんなところにテントを張るなんて、なんて贅沢なんだろう。今度来るときはここにテントを張ろうと決めて、最後の急登にかかる。標高1900m。もう山頂は目と鼻の先だが、再び両脚が攣って休憩を余儀なくされる。5時45分までに山頂に立つと決めてジリジリと進んだ。

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不意に稜線から朝日がこぼれて、僕は生き返る。最後の数十mを駆け上がり、一気に山頂部へ。そこに待っていたのは山からの贈り物だった。東京平野は雲で覆われ、雲の海に光が降り注いでいる。視線を移すと雪を抱いた富士山が構え、緑の尾根道は碧空へと続いている。
山頂はすぐ隣にあったが、景色の良い山梨側のピークでのんびりとごはんを食べた。隣にいた夫婦と話していると「田中陽希みたいね」と言われた。恐れ多い。彼が成し遂げた人力での百名山全山縦走がどんなに過酷なトレイルなのか、今の僕にはほんの少しだけ分かるような気がした。

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1時間もすると富士山には笠雲がかかり、空気の透明感は失われていく。僕は下山することにした。ツガが空に溶けるような尾根を鴨沢へと下る。奥多摩小屋の前には色とりどりのテントが立つ穏やかなテン場があって、ここにも泊まりたいと思う。

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鴨沢はやたらと遠かった。キツいところは特にないが距離が長い。いつまでも続く登山道をコースタイムの半分で下って舗装路に出たが、鴨沢バス停はそこからさらに距離があって、バス停まで猿を見ながらのんびり下った。
 

大菩薩嶺~雲取山テント泊縦走のコースタイムとまとめ

大菩薩嶺~雲取山コースタイム

<Day1>

0805 甲斐大和駅着、バス出発

0909 上日川峠ロッジ長兵衛到着、登山開始

0928 福ちゃん荘通過、直登ルートへ。

1015 大菩薩嶺山頂

1054 大菩薩峠を抜けて介山荘通過

1129 フルコンバ通過

1207 ノーメダワ通過

1331 藤タワ通過

1412 丹波山村やまびこ橋通過

1607 サオラ峠到着

1702 御岳沢通過

1740 三条小屋到着

<Day2>

0330 三条の湯出発、登山開始

0540 雲取山山頂、休憩

0636 雲取山山頂発、鴨沢方面へ下山開始

0711 奥多摩小屋通過

0852 舗装路到着

0914 鴨沢バス停到着、下山完了。

梅雨の大菩薩嶺~雲取山縦走まとめ

初めての梅雨のテント泊縦走は、多少無茶なプランだったけれど、天気に恵まれてこれ以上ないくらいの山行となった。辛さと喜びを味わいながら歩いて、それでもやはり山はいいなと思うから不思議だ。あの新緑のなかを歩くトレイルは最初で最後だと思う。そろそろ夏山シーズン、通勤電車に揺られながら僕はいつも山のことを妄想してウズウズしている。
 
written by 南蒼樹(@Sight50Sky).